

Circular Economy
2025年6月8日
「土」からなぜ電気ができるの?!〜目に見えないものを観察する力を養う
OCHABI主催のデザイン教育シンポジウム。第4回目のゲストはデザインエンジニアの中川聡さんと共に、土を通して自然界の不思議に触れ、目に見えないものを見つめる観察眼を育むWS。大人もワクワクする様な面白い実験がいっぱいです。
T.B
ダヴィンチスケッチをワークショップで

さて。シンポジウム後半では、ダヴィンチスケッチを⾏ないました!
今回、会場で起こっていること、⾒ていることが「⼀体なんでだろう?」と不思議に思うことだらけ。それらをよく⾒て描いていくことを促していきます。

⼦どもたちは、観察した⼟や微⽣物、電気の発⽣現象を⾃分なりに描き、考察。
描画の対象は参加者のよって様々で、⼟や⽔、観察対象の素材を⾃由に使い、⾃分の発⾒や感じたことを視覚化していきます。

OCHABIコーチたちは参加者をサポートし、科学的な知識とアート表現の融合を良い形でアウトプットできるよう促してまいります。
「なぜ光るのか?」の答えを詳しく
ダヴィンチスケッチを進める間、中川さんが電気の発⽣について詳しく解説していきました。
「これでなぜ電球が光るのか?なぜ電気が⽣まれるのか?」という疑問を解消していく時間です。
会場に⼟や草、電気を起こすいろんな装置などがありますが、それらに混ざって⾒慣れたものがデスクに乗っていました。
静物を描くときのモチーフのようなものです。カゴに⼊れられた果物や野菜、フランスパン。

その中から中川さんがジャガイモ、トマトを選んで電極を刺し込みます。
微弱な電気が流れているため、ゆっくり、ほんのり電球が光り出します。


ここから、科学の説明に⼊ります。
⼟や⽔、野菜、果物に刺した⾦属は、やがて中で錆びていく。錆びていくということは、⾦属も元々は⼟から出来たものなので、⼟に帰ろうとしているわけです。
あるものに反応して分解されて、元のところに戻って⾏こうとしている。
それを「イオン反応」と⾔います。このイオン反応の⼒によって電気が発⽣する。
⾊々な物質の間でそれが起こっている、ということです。


そして、中川さんはモチーフの中にあるフランスパンを⼿に取りました。
それに電極をつなぐと・・・なんとなんと、電球が光りました!
「パンでも電気がついた!」⼦どもたちが思わず⼝にします。
なんだかとても嬉しそうです。

なにしろ学校の授業では、「パンは電気を通す」と答えるとバツをも らいますからね。
「⼩⻨なのになんで電気がつくのか?」という疑問も、先ほどの「イオン反応」のお話で解決できますね。 そうやって湧いた疑問を、よーく観察してみると、⾊々なものに気付く無限があります。
ダヴィンチスケッチで、今回それを表現してもらいました。
謎の液体!驚異の「ワームティー」
今回、中川さんがご⽤意された濃い茶⾊の液体について話されます。
透明の容器に⼊った、すごく濃い茶⾊の液体を中川さんが参加者に⾒せます。

この液体は何が作ったものか、をご説明いただきました。
これは、ミミズが作った液体であること、通称「ワームティー」であることを説明されました。

そのワームティーを作る装置も会場にお持ちいただいており、作られる過程もご説明いただきました。

装置となる容器の中には、たくさんのミミズがいました。
「このミミズたちが、地球を作っている。地球にとってなくてはならない存在」とおっしゃいます。

最初の⽅で出てきた⽜糞を分解するお話につながりますね。
そして「ワームティー」と「デザイン」「アート」を関連づけるお話に移ります。
ワームティーは、すごくきめの細かい粒⼦が溶け込んでいて、顕微鏡でもその粒⼦は確認出来ないくらい。なので、インクや染料に近いもの。
というご説明の後、中川さんがワームティーでご⾃⾝で描かれた⿃の絵をご披露。すごいクオリティー!

そのほか、ワームティーで染めた布や塗装された器などもありました。ワームティーの可能性の広さに驚きます。

アートの学校ならではの⽬線で
⽜が餌を⾷べてふんをする。そして微⽣物が分解する。さらにそれをミミズが⾷べて分解して、⾬が降ってそれが滲み出た液体がワームティー。
その途中の過程で出た⼟をケースに⼊れて電池を作っている、という情報もいただきました。すごい!本当にミミズが地球を作っていますね!
⼟と電気の関係を、アートの学校ならではの⽬線で観察して、今後、⼟を⾒ていって研究してほしい。
⼟とアート、⼟とデザインの関係を⾃分の感覚で、⾃分の⽬で確かめながら、いろんなことを発想してもらえたら嬉しい、と中川さんはおっしゃいました。

ダヴィンチスケッチが出 来上がっていく
⼟と電気のことを学んでいる中で、着々とダヴィンチスケッチが進んでいるエリアがありました。その作品たちを紹介する時間を取りました。
今回聞いたこと、⾒たことをしっかり描いて、⾔語化もできている作品たちでした。
それらを中川さんが⾒ながら、改めてダヴィンチスケッチを描いた参加者たちにワームティーのことを詳しく解説していただきました。
作者の声を聞いてみると、「⼟のことにすごく興味が湧いた」という声が聞けました。
その⾔葉を聞けた中川さんは、「すごく嬉しい」とお喜びでした。
中川さんからのメッセージ
最後に、中川さんが子ども達や参加者に持ち帰って欲しい言葉を伝えてくれました。

「まだ見ぬ過去」
過去は⾒たことがあるものと思われているが、⾃分たちが⽣きていく上で、どうすれば楽に幸せに⾯⽩く⽣活できるか、そのことに⼀⽣懸命になるが故に気付けないことがある。

毎⽇⾃分の周りを定点観測して、よーく⾒ていないと気付けない「違和感」がある。
デザインは「何か変だな」と違和感に気づくところから始まる。

気づかないままで⽇々通り過ぎていた道で、新しい発⾒ができるかもしれない。
五感を充分に働かせて「違和感」に気づくチカラを持ってもらいたい。
そうすることで毎⽇新しい⾃分に出会えます。
1年前に考えていたあのことが、実はこういうことだったんだ、ということに気づくんです。

最後に、これからの⽣活がより楽しくなる、より新しいものにできるような素晴らしい⾔葉で締めくくっていただきました。
中川聡さん、ありがとうございました!

そして、今回は大掛かりな会場の設営でしたね・・関係者の皆様、本当にお疲れさまでした!