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Design

2025年6月2日

「これからのデザイン」

OCHABI主催のデザイン教育シンポジウム。第1回目のゲスト佐藤卓さんが語る「これからのデザイン」のお話。子ども達に分かりやすく、デザインの考え方やご自身の経験から大切なことを伝えてくれました。

T.B

デザインとは「間をつなぐ」こと


デザイン教育シンポジウム#0、グラフィックデザイナー佐藤卓さんの基調講演では、⻑年の経験を踏まえて「デザインとは何か?」を参加者に問いかけ、「かっこいい物をつくる」イメージを超えた「間をつなぐこと」という広い意味を解説。


その具体例として、ご⾃⾝がデザインされた「明治おいしい⽜乳」の紙パックのデザインを例に、お話が進められました。




⽜乳を⼊れる「パッケージ」という容器と「⽜乳」という液体、そしてそれらを「⼈々」とつなぐことがデザインの本質であると説明します。


⽜乳は液体なので、⼿ではお客さんの元に運べない。なので昔はガラス瓶、今は紙パックで提供されるが、お客さんがどの製品か選びやすく、また覚えやすくするための「名前」「⾊」「配置」をどうすれば良いか?という考えが、紙パックには必要となってきます。

⽇本語⽂字は縦組み横組の両⽅が使える素晴らしさがある。「おいしい⽜乳」の容器は縦型だから、縦組の⽂字の⽅が⼤きく⼊れられるということを考えられ、書体や⽂字間、⾊彩が⽜乳の味のイメージに結び付くことを解説されました。


デザイナーとは、このように物事と⼈々をつなぐ間で⾏なう仕事であり、そこが、⾃分のメッセージを込めて作品を世に出す芸術家とは違うところです。


卓さんが考える「これからのデザインとは?」


これまでのデザインのイメージは、医療、政治、教育や芸術などと並んだ、いろいろなカテゴリーの中の⼀つにデザインがあるイメージでした。

しかしこれからは、そのいろいろなカテゴリーと⼈々の営みをつないでいるものがデザインである、と語ります。


「⼈々の⽣活に役⽴たせるためには、どんな物事にも必ずデザインが必要、という考えになっていかなければならない」と。


例えば医療。⼊院した時に横になるベッドもデザインされているし、⾝体を診る装置もデザインされている。


1分1秒を争う医療現場では、すぐに正確な映像で分かりやすく情報を伝えなければならないし、薬品を選ぶときには絶対に間違えてはならない。そのために映像にも薬品のラベルにもデザインが必要。



そのように、あらゆるカテゴリー全てにデザインがあるという理解が、今はまだ少ない。しかし、これからはそのような概念がどんどん広がっていく、と佐藤卓さんはおっしゃいます。


それに答えられるデザイナーも必要になってくるし、仕事もどんどん増えていくと思う。これまで関係ないと思っていた技術や考えが必要になってくる。


だから「これからは間違いなく楽しい。デザインはすごい可能性がある世界だから」と。

「モノ」のデザインと「コト」のデザイン

⻑い間デザインの仕事をしてきて、つくづく「デザインと関わりのない物事は何ひとつ無い」と思う!と佐藤卓さんは語ります。


世の中は⽬に⾒える「モノ」のデザインと⽬に⾒えない「コト」のデザインで出来ている。それを交通の例をあげて話されました。


右側通⾏、左側通⾏のルールは⽬に⾒えないけれど、それに則って⾞が⾛っている。⼈が歩いている。それはルールという「コト」のデザイン。


信号機は視覚によって交通を乱さないための機器。それは「モノ」のデザイン。信号がなくなってしまっても、ルールがなくなってしまっても、交通は機能しなくなってしまう。


そういう考えで世の中を⾒てみると、⽇常の中にデザインが必要だということがよくわかってくる、という話をされました。



「デザイン感覚」を⾝に付ける

たとえデザイナーにならなくても、「デザイン感覚」というのを⾝に付けておくと絶対に役に⽴つ、ということについて。


例えば、デザイナーに何かを相談するとき。⾃分に「デザイン感覚」があれば⼤いに役に⽴つ。⾃分がやらなくても、誰かにお願いをする仕事というものはたくさん存在するのだから、と佐藤卓さんは語ります。



例に挙げられたのが、ケーキ屋さんをやりたい時のこと。


お店の名前をどういう名前にするのか。その名前はどういうロゴにするのか。お店の雰囲気をどのようにするか。何⼈座れる店内にするか。ケーキを作っているところを⾒せる造りにするのかしないのか。メニューをどういう⽂字で、どういう⼤きさでどういう順番で書くか。・・・それらは全てデザイン。


「デザイン感覚」が⾝に付いていれば、デザイナーにしっかり希望が伝わって、より良いケーキ屋さんが出来る。


ケーキ屋さんオープンを例に分かりやすく話していただき、「“これはデザインだ”ということを分からなくても良いから、デザインというものが知らないところで⼈々の⽣活に役に⽴っている、ということを考えてほしい」と参加者に伝えます。


当たり前の⽣活をデザインの視点で⾒る


「あ!これってデザインかな?」と思ったら、お⽗さん、お⺟さんに聞いてみてほしい。もしかするとお⽗さん、お⺟さんは分からないかも知れない。


でも、そうやってデザインの会話をしてほしい、と語ります。そういうところからデザインの感覚が広まっていって、⽣活が豊かになっていきます。と。


⽣活の豊かさというお話の流れで、「デザインを考えられることはとても幸せなこと」というお話になります。

世の中には飲む⽔すらなく多くの⼈が亡くなっている地域があり、戦争をしている地域もある。そういうところでは、デザインを考えられない。


⽇々⽣きるか死ぬかの世界では、私たちが当たり前と思っている⽇常を送れていない。


デザインが考えられる⽇常を「ありがたい」と思わなければいけません。


「ありがたい」を漢字にすると分かりますが、「有り難い」とは、「ありえないことが起こる」ということなんです。



デザインを考える、ということは、当たり前の⽇常に気付いて「有り難い」と感謝することでもあるのです。


そして「今⽇分からなくても良いので、なんだかデザインって、奥が深くて⾯⽩い!ということが今⽇は伝わればいいと思っています」という⾔葉で締め括られました。





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